食べる機能に対応した食事

1. 介護食とは

摂食・嚥下障害で「食べれない」、「飲み込めない」、「むせる」 方が、食べる機能で食べていただける食事(当研究会の定義)
摂食や嚥下が困難な人のために、食物を摂取しやすく調整した食事。流動体やペースト状にしたものや、とろみをつけたりゼリー状にしたものなど。(大辞泉より)

2. 持っている機能とは

①捕食力(口唇力)、②咀嚼力、③食塊形成力、④口腔内保持力、⑤送り込み力、⑥嚥下力の6つの力を言う。

①捕食力(口唇力)~食べ物を口まで運び,口唇を閉鎖する力

捕食力とは,食べ物を口に運ぶ力と,口唇閉鎖力(口を開け,口唇を閉鎖する力)です。口唇閉鎖力が低下すると,食べ物を補食することができなくなり,流涎や食べこぼし,飲み込みづらさなどが見られる。

②咀嚼力~食べ物を噛み切る・砕く・押し潰す力

咀嚼力とは,食べ物を嚥下できる大きさになるまで噛む力と,舌や上顎で押し潰す力です。咀嚼力は,歯の状態(義歯,歯茎)と咀嚼筋力で決まる。咀嚼力が低下すると,唾液の分泌が少なくなって食塊が形成できなくなり,唾液の効果も期待できなくなる。その結果,飲み込みづらい,喉に詰まらせる,誤嚥などが見られます。

③食塊形成力~噛み砕いた食べ物と唾液を混ぜてまとめる力

食塊形成力とは,咀嚼したバラバラの食べ物を飲み込むために一塊にする力です。元気な人は,水を一口ずつ食塊して0.5秒(瞬きの速度)の速さで飲んでいる。摂食・嚥下障害の人が安全に食べるためには,唾液の量・質,舌や頬の動きが重要になる。唾液の量が少なくなると食塊形成力が低下し,口腔内で食べ物がバラバラになり,その結果,飲み込みづらい,喉に詰まらせる,誤嚥などが見られます。

④口腔内保持力~舌の上に食べ物を停滞させて味わう力

口腔内保持力とは,食べ物を認識できない人や味覚が低下した人が,食べ物を数秒舌の上に停滞させて食べ物を認知し,舌で味わい,鼻腔を刺激し,次の嚥下反射運動につなぐ力です。長い人は2~4分必要です。

⑤ 送り込み力~舌を挙上させて喉の奥に送る力

送り込み力とは,舌を挙上させて喉の奥に送り込む力です。この時,嚥下反射が引き起こされる。その動作は,随意運動です。

⑥嚥下力~食べ物を誤嚥させずに胃まで送り届け力

嚥下力とは,食べ物を誤嚥させずに胃まで送り届ける力です。喉頭は常時呼吸運動をしており,嚥下によって食塊の通路になります。この切り替えが非常に短時間で行われ,無事に咽頭を通過した食塊は,食道の蠕動運動によって胃まで到達する。

3. 食事形態

要介護になった原因や症状によりこの持っている食べる機能は、大きく異なる事から食事形態も個々に対応することが必須である。要介護高齢者は、この機能を主に次の5つに分類することができる。

①義歯、歯茎食べの人(老化による)

老化を促進させないことを目的にする。脳疾患がない場合、コミュニケーションをとりながら、かんで食べることのサポートが可能。咀嚼力や消化・吸収力を対応した食事形態にする。

②失認、失行の人(認知症)

食事を食物と認識出来ない、口の中の食物をかむ・舌でまとめる・喉の奥に送り込む・飲み込むことを忘れるなどの行為がみられる。食事はその方が育った時代の思い起こさせる献立にする(思い出し法)。嚥下機能は、比較的しっかりしているため(嚥下機能低下は、終末期から見られる)、食物を一口大にまとめて舌の上に乗せて重量感を出したり、冷たいゼリーにして触感を刺激(冷温)したり、舌の上に食物を留めるようにして味蕾を刺激(味覚)や鼻腔を刺激(臭覚)するなどの工夫することで、咀嚼や舌の運動を誘発できる。

③麻痺の人(脳卒中後遺症)

唾液が飲み込めないために涎が多くなり、呼吸に障害があるために誤嚥の危険性が高く、口から食べることは高リスクになる。食事形態は、押しつぶしてもバラバラにならないまとまりと張り付きがなく滑りがあり、気管支に食物が入らない姿勢や首の延伸に注意する。

④筋固縮の人(パーキンソン病)

麻痺は治りにくいが、固縮は動かすことで改善される。食物は認知できるので、かむ行為を促す硬さの食事形態にする。

⑤意欲障害の人(うつ病)

うつ期は、食事量にむらがあり食べる意欲を失っているので、積極的に関わり、好きなもの・食べたいものを見つけ出しながら一口を大事にし、口当たりの良い食事形態にする。水分補給は、必ず行うことが大切である。

4. タイプ別とは

食べる機能に対応した食事形態
①大きさ ②硬さ ③まとまり、送り込み を原因疾患別に整理し、その人の食べる機能レベルを次の4タイプに分類した。

  • タイプ1(かむ応援食)

    噛む力がやや弱い人。一口大の大きさ、箸でつまめ25回程度で咀嚼し、飲み込める硬さにする。

  • タイプ2(つぶす応援食)

    噛む力が弱く、食塊する力がやや弱い人。大スプーンにのる大きさ、箸や手でつまめ20回程度で咀嚼し、飲み込める硬さにする。

  • タイプ3(まとめる応援食)

    噛む力がほとんどなく、食塊にして喉に送る力や飲み込む力が弱い人。食事介助で捕食しやすい大きさ、10~15回程度で咀嚼できる硬さにして嚥下反射を引き起こし反射運動の速度に合わせた「まとまり」と「すべり」にする。

  • タイプ4(飲み込む応援食)

    噛む力も食塊にする力もほとんどなく、飲み込む力もかなり低下している人。食事介助で捕食しやすい大きさ、数回程度で咀嚼し、飲み込める硬さにする。体温で溶けないまとまり、舌の挙上運動で送り込めるすべり、嚥下反射や蠕動運動の速度に合わせた「まとまりと「すべり」にする。

    なお②失認、失行の人と③麻痺の人は、タイプ3はレベルを2分類、タイプ4はレベルを3分類する。